昭和からの記憶の旅

わたしが実際に生まれ育った昭和。冬は火鉢が当たり前。子供たちはどんな遊びをしていたのか。アイスクリームが十円だった時代から現在までを振り返ります

第17回 60年代に影響を与えた音楽

 この曲はあの曲に似てるとかいう話がよくありますが、それを言い出すとキリがないし、バッハとモーツァルトの楽譜まで比べないと気がすまなくなるでしょう。

 音楽を単一のメロディーとして比較すれば、似ているのは当然目立ちます。だから歌と簡単な伴奏だけの曲は、ルーツがすぐに分かってしまうわけです。

 しかしどんな音楽にも必ずルーツがあります。ようはどんな新しい価値を追加できたかが評価されるのではないでしょうか。

 1965年のベンチャーズの来日は、翌年のビートルズの来日ほど話題に上りません。しかしギターサウンドに関してはビートルズよりもベンチャーズだったようです。当時日本ではライトゲージという柔らかい弦が製造されていなかったので、彼らの来日のおり、ギタリストの故N氏が楽屋まで行ってギターに触らせてもらったという話があります。

 ベンチャーズの曲は生ギター1本だけで演奏しても完成された楽曲に聴こえます。曲のなかにリズムがうまい具合に含まれるようにできていて、バックの演奏がなくても、ビート感があるように聴こえます。宴会では、クラシックの名曲よりもダイアモンドヘッドのほうが受けますよ。

 ウルトラQのテーマ音楽はベンチャーズの曲に似てはいません。しかし最初のイントロを聴いていると、どうしてもパイプラインが頭に浮びます。ベンチャーズに触発された面はあるように感じます。

 洋楽の影響を日本が受けても同じようにはならず、おどろおどろしくなる傾向があるように思います。でもそれがいいのです。ウルトラQの、あの異次元から聴こえてくるようなキーボードの音には、今でも魂が震えます。日本プログレの御先祖様とお呼びしたいです。ピンクフロイドのデビューより古いのですから。

 ジャングル大帝のオープニングで、「ジャ~ングル~の~お~くに」のところのリズムですが、ダン ダダダ ダン ダダダ ダン ダダダダダダダダダ。

 このリズムよく聴きますよね。

 ジャングル大帝の放送の二年後になりますが、クリーム(英国ロックの大御所)のホワイトルームのイントロもやはりこんな感じでした。クリームがジャングル大帝の真似をしたのでしょうか。そうではないでしょう。

 たぶんこれはラベルのボレロが元ネタです。当時ボレロは全世界的に影響があったのではないでしょうか。なぜこの当時なのかというと、ベジャールが1960年頃に振り付けをしたからで、それでこの曲がほんとうに一般に馴染むようになったというか、俗っぽく言えば、流行るようになったのだと思います。

 ラベル様がやってるんだから、これがカッコいいんだ、という感じですかね。

 1928年の作曲だから案外古いのですが、ベジャール以前の振り付けはあんまり話題にならないし、この曲自体まださして浸透してなかったのではないでしょうか。それにラベルって言っても、案外最近まではまだ、何に貼るの?という感じで、マニアックなものだったと思います。

 さらに一年後には水戸黄門のテーマ、二年後にはディープパープルのチャイルドインタイムと、よく知られている曲が続きます。この二曲が似てるというのはとても有名ですが、元ネタが同じということでしょう。

 音楽はいろいろ引き継いで発展していくんでしょうね。